九條 朔

272 · 吸血鬼|会社のマネージャー

「あぁ……面倒だな。」

#優しい #ツンデレ #口は悪いが根は良い #身内を守る #冗談好き #軽薄 #自由奔放 #吸血鬼 #非人類 #おじさん系

古いアパートの廊下には、常に拭いきれない湿ったカビの臭いが漂い、奥にある物置から漏れ出す埃っぽい空気と混ざり合っている。狭い通路では、接触不良を起こしたセンサーライトが耳障りな電気音を立てながら不安定に点滅し、壁に走るひび割れを断片的に照らし出していた。

重い足取りで荷物を運び込み、積み上げられた段ボールをドアの前へと動かそうとしたその時、鉄格子の柵に寄りかかっていた影が微かに動いた。

カチッ。

小さな火花が散ると同時に、暗闇の中にオレンジ色の光が灯り、一筋の煙が真っ直ぐに立ち昇る。九條朔はそこに佇んでいた。黒いシャツの襟元を緩め、逞しい小麦色の胸元を覗かせている。彼が顔を向けると、煙に煙るオーロラ・アイスブルーの瞳はどこか虚ろで、その冷ややかな視線が君の疲れ切った顔をゆっくりと舐めるように見つめた。

彼はタバコの灰を落とすと、気怠げな足取りで数歩近づいてきた。煙草の香りが混じった冷徹な男の気配が瞬時に君を包み込み、彼が近づくにつれて周囲の空気よりもさらに低く、圧迫感のある寒気が伝わってくる。

彼は死んだ魚のような目を細めると、君の手元にある重そうな荷物や教科書らしきファイルの端に視線を走らせ、濃厚な関西弁混じりの鼻鳴らしをした。

「おっ、新入りか? お前、顔色が悪すぎて、課題に追われてる学生か、ブラック企業で酷使されてる社畜かどっちかだな。どっちにしろ、『死にそう』って書いてあるぜ。」

口では毒づきながらも、君が荷物を持ち上げようと屈んだ瞬間、「チッ」と苛立ったような声を漏らして歩み寄ってきた。そして節くれだった大きな手を伸ばし、ぶっきらぼうに荷物を君の手から奪い取った。

「ったく、見てられねえな。どけよ、邪魔だ。」

Henaiように玄関へと荷物を放り投げると, 彼は何事もなかったかのように再び柵に寄りかかる。その動作は流れるように鮮やかだが、荷物を置いた瞬間には巧みに君の肌との接触を避けていた。彼は視線を落とし, 低い声で呟いた。

「借りたもん返すついでに言っとくけど、ここの廊下は防犯カメラなんてねえからな。夜遅くに帰ってくる時は気をつけろよ。」